山行記録

Activity Diary
  • 2016 06.04
    投稿者:S.Baba投稿日:2016年6月4日

    カナダ最高峰ローガンに、一般ルートであるキングトレンチルートから一人で登ってきました。そこで以下、簡潔に報告します。

     

    5月16日―18日

    イエローナイフの自宅前にて。山のような荷物。これに1か月分の食料、燃料が加わると思うと眩暈が・・・。

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    ユーコン準州のホワイトホースまで飛び、セスナの飛行場があるクルアニレイクまではヒッチハイクしました。

    「STOP」の前でカードを掲げます。

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    温かい人々のおかげで、トータル待ち時間1時間で200km離れた飛行場に着きました。

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    5月19日

    天気が回復し、セスナでローガンに向かいました。

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    見えてきたMt.Logan。5000m以上のピークが20㎞にもわたり連なる超巨大な山塊。

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    2800mの氷河上にランディング。

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    15:40、天気もいいので、そのまま歩きだしました。さっそくクレバス帯を通過しますが、目視できるので比較的簡単に通過しました。

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    22:00 C1(3300m)着。

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    5月21日

    20日は悪天のため停滞。翌日C2に向けて歩き出しました。

    1か月分以上の食料、燃料をそりに載せて運びますが、正直ウンザリ・・・。

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    C2(4100mキングコル)到着。正確に言うと到着目前でホワイトアウトになったため、ヤド密集地?100m手前にテントを張りました。バックにはキングピークがそびえます。

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    5月22日

    荷上げを行いました。

    ここが最初の核心で、40度の急斜面とセラック帯を、ソリを引いて超えます。

    が、自分の体力?技術?では、とても越えられず、斜面の途中で身動き取れなくなりました。

    思案の末、ザックとソリに載せていたダッフルバックを別々に担いで何度も往復しながら進むことにしました。

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    直後のセラック帯では、ルート取りがよくわからず右往左往しながらなんとか抜けました。ここも別々に荷物を担いで何度も往復・・・心が折れそう・・・

    セラック基部をトラバース。足元から崩れる雪玉は巨大なクレバスに吸い込まれていきます。その雪玉に、ふと自分の姿を重ねてしまいました。

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    小さなヒドンクレバス。

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    この日は4470mに荷物をデポし、C2に戻りました。心がボキボキに折れましたが、ルートを見いだせたのが救いでした。

    5月24日

    23日は悪天のため停滞、翌日にC3に向かいました。軽くなった荷物を背負い、余裕でデポ地まで到着。

    が、天候は下り坂。視界が徐々に悪くなる中で本ルート一番の核心、4700m付近のクレバス帯に差し掛かりました。時間との勝負になり、ノンストップで歩き続けました。

    突然、右足が捕られ転倒しました。瞬間的にヒドンクレバスにはまった事を了解しますが、腰に差したポール(クレバス転落防止用)とザックが引っかかり、事なきを得ました。

    下写真は落ちた片足を引き上げた直後の写真(精神を落ち着かせるため、あえての撮影)。

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    底知れぬクレバス。幅が小さくて助かりました。

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    下写真は下山時に撮影した転倒現場。デポ旗のクロスは自分が立てたもの。全く表面に凹凸は見られず事前判断は難しいでしょう。

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    ところで、今回行ったクレバス対策は以下の通り。

    ①腰に2本のポールをさす。

    ②行動中は常時ヘルメットを着用。転落時に頭部損傷を防ぐため。

    ③ダブルアックスを常時ハーネスに着用。転落時に登り返せるよう。

    と・・・何とも心細い方法ばかり。国立公園の許可証によれば、2010年の同ルートだけで3件のクレバス転落事故が起きたとあり、出発前は正直憂鬱で仕方ありませんでした。

     

    途中、視界待ちを幾度かしながらもC3(4900m)に無事到着しました。

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    5月25日-26日

    25日は高所順化のためレスト。26日は突風に小雪のため停滞しました。

    5月27日

    SPO283、心拍数56と、2日間のおかげで高所順化がかなり順調にいっているようでした。荷上げも面倒で、一気にC4に向けて出発します。

    自然の造形美。

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    単調な氷河歩きが続きましたが、風が強く苦しい登高でした。やっとC4(5300m)に到着し、ついに5000m越えのキャンプとなりました。

    下写真はすれ違った登山者からいただいたペペローニ。この日も含めて食欲だけは終始絶好調で(28日を除く)、下界にいるような調子で毎日食べました。

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    ある日の5000m越えキャンプにて。パスタ、サラミ、チョコ・・・ちょっと夕食食べすぎたな~と思ってカロリー計算してみると、なんと1800kcal !さすがに食べ過ぎ。

    5月28日

    夜中に頭痛となり、起床時のSPO268、心拍数79。さすがに苦しい。おまけに稜線上は激しい雪煙が舞い、時々テントに突風がぶち当たる。

    しかし15:40、雪煙も収まったのでC5に向けて出発しました。C4とC5の標高差がほとんど無いことから、C4以降は一気に進む計画を立てていました。

    まずプロスペクターコルへ登ります。

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    コルに到着。風もすっかり収まり、快適でした。ちなみにソリはC4にデポし、10日分の食料、燃料をザックに詰めて登りました。

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    それからはひたすらトラバースし、19:00にC5予定の5400m地点に到着しました。頭痛と吐き気を催しながら、1時間半かけてテン場を造成。

    コテコテのパスタを食べる気にならず、この日だけはインスタントうどん(500kcal)だけで夕食を済ませました。

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    5月29日

    疲れたから明日は荒天だったら休めていいのにな、と本末転倒なことを考えて迎えた翌28日。残念ながら、いいお天気。

    9:00アタックに出発。

    当初ウエストピーク(WP)を延々巻き、ローガン本峰とのコルに抜けようと考えてルート取りを行いました。

    しかしイーストピーク(EP)が望める位置まで来たときに、それが自分には無謀だとわかりました。質の悪そうなセラックやクレバスが延々続き、とても行く気になれませんでした。天気もガスが頻繁に流れてくるようになりました。

    そこでWPに登るルートに変更、登り返しますが十二分に遠くて心が折れます。行けるとこまで行こうと言い聞かせて登りました。

     

    やっとWPに登って本峰を見ることができました。遠い・・・

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    ここから300mも下って再び300mも登らないといけない。しかも逆行程なので帰りも同じ。時刻は13:50、天候は晴れだがガスが頻繁に流れてくる状況。そもそも最初からルート選定ミス、出発時刻の遅さ、軽い頭痛・・・

    ふと引き返す理由を並べている自分に気付き、少し冷静に計算し直します。

    おそらくピークには5時前には到着でき、さすれば10時、遅くても11時にはC5に戻れるはず。ガスは局所的に日中の高温で発生したものが流されてきたもので、長期の悪天の兆しではないだろう。悪化したとしてもC5付近以外はルートはわかりやすいし、C5付近にはデポ旗をたくさん立ててきたから大丈夫。たとえホワイトアウトしても、最低限のビバーク体制は取れる準備は出来ている・・・

    そんなわけで腹をくくって本峰に向かいました。ルートに迷いましたが、北東に延びる尾根にトラバースしながら上がることにしました。

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    尾根に上がると単調なナイフリッジが続きました。あと少し。自分にしてはかなり珍しく、ちょっと胸が高まりました。

    16:20ついに登頂!下写真はWPをバックに。

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    山頂に何もないのでGPSの証拠?写真。5959m、正真正銘のカナダ最高点。 

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    天候も悪化することなく、C5には21:20に戻ることができました。

    5月30日

    ゆっくりと昼12:00に出発。C3まで高度を下げたかったのですが、C4付近でガスと小雪になり、やむなくC4泊に。まだまだ5300mもあって酸素分圧は低いけれど、通常食に加えスパムをコッヘルで焼いて一缶全部食べたり、ビーフジャーキーを一袋食べたりと腹いっぱい食べました。

    5月31日

    9:00にC2目指して出発。

    振返れば新雪に一筋のトレース。しばし足を止めて見入ってしまいました。

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    21:00ランディングポイントに到着。結局この日、一気に下山してしまいました。

    6月1日

    晴天。

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    セスナ会社に衛星電話で連絡すると、昼過ぎにはピックアップしてくれました。

    ホワイトホース、そしてイエローナイフに戻ると、空気が甘く爽やかに香り、淡い緑が眩しく迎えてくれました。

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    わずか2週間でMt.ローガンの遠征を終えました。が、極北の足早な季節は早春から初夏へと、確実に移ろっているのでした。

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